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フリーター、イギリスへ行く

イギリス/大学院留学/LSE/Social Policy

貧困ってなんだー!(完)

ちよわかまるです。
ついにきました!貧困ってなんだー!シリーズついにファイナルです。名残惜しいですね。今まで計4回の話を踏まえながら、実際に何をすればいいのかを適度に考えて終わりにしようと思います。

まず、日本においてどういう人が貧困に陥っているのかを押さえておきましょう。厚労省の「国民生活基礎調査」を見てみます。2012年の貧困線は122万円です。それ以下で生活する世帯の割合=相対的貧困率は16.1%。子どもの貧困率は16.3%、ひとり親世帯は54.6%です。え、ひとり親世帯の半分は122万円以下で生活してるってこと?正直、びっくり。
阿部彩さんという研究者が厚労省のデータを基にさらに詳細な分析をしています(コチラ)。興味深いのは、高齢者の貧困は政府の再分配政策で大幅に削減できているけど、20歳未満についてはあまり改善されていないってとこですね。
もう一つ、生活保護受給についても見ます。1995年から受給者は増加を続け、2014年には3倍近くになってます。2010年の受給世帯の割合は、高齢者世帯42.9%、母子世帯7.7%、疾病・障害者世帯33.1%、その他の世帯16.2%(うち20~29歳が6.2%、50歳以上が33.1%)となってます。
以上からざっと分かるのは、
・高齢者は貧困率が高いが政策でだいぶ軽減している
・ひとり親家庭はすさまじく貧困に陥りやすい
・いわゆる健康な若者は思っているほど生活保護を受けていない
くらいですかね。日本では世帯収入による貧困率のみで、世代間の貧困の連鎖ははっきり分からないです。ただ、間接的に示すデータとして、世帯年収と教科の正答率、世帯年収と高校卒業後の進路などがあります(平成24年厚生労働白書のP177~179参照)。


さて、じゃあどうする。ぼくがLSEで勉強して魅力的だと思ったのは「Early intervention」という政策です。直訳すると「早い段階の介入」です。子どもが産まれる前から3歳くらいまでが子どもの将来にとって大事だから、その期間の福祉サービスを充実させようってことです。
まず、経済的援助。前回書きましたが、収入が低いことそれ自体が子どもの発達やその後の収入に影響します。具体的には各種出産手当、育児休業中の給付(昨年50%から67%になった)などを手厚く。特に母子家庭には手厚く。
次に、育児サポートです。特に1人目の出産の後って荒れちゃうんです(うちの姉は荒れていた)。母と子が孤立しないために、家庭訪問事業や母親同士のネットワークとかが重要です。ただね、たとえばですけど、かけこみ出産でその後ささっと帰宅しちゃったりする若いお母様とか、福祉サービスから漏れやすいんですよね。だから、利用者を待つのでなく、病院スタッフとか福祉事務所が自分たちで動き回って先手を打っていく必要があります。
あと、イギリスで広まっているのは「Parenting Programme」というものです。簡単に言うと母親・父親教室ってかんじですかね。これは育児の質の向上を目指すもので、子どもの発達に貢献することが明らかになっています。ただ、運営コストがでかい。
これら「Early intervention」はお金がかかるんですが、長期的には財政的にプラスになる(費用対効果が高い)という調査もあります(Allen, 2011)。税金を使うことを考えると、どれだけ節約になるかを示すのはちょー大事なんであります。


別の角度から、支援者と被支援者という現場での関係についても考えてみます。大切なのは、自分は貧しい、被害者だという認識を捨てることです。これは、貧困に陥っている本人もそうですが、支援者側の「この人たちは何もできないから助けないと!」という考えの転換も意味します。人間(agency)は思っている以上にたくましいし、また、たくましくならなければ生き抜いていくことはできない。一方的にお金を与える、ご飯を与えるだけでは、長期的にほとんど意味がないのではないかと思います。むしろ、自信や責任を形成し共有すること(empowerment)が大切な気がします。たとえば、ぼくが支援者だったとします。ぼくとの関係を通して相手の人が自信を持ち、ぼくがいるからがんばろうと思ってもらう(ぼくもその人から自信と責任をいただきます)。こうして初めて、社会の一員として「参加」するという貧困からの離脱の第一歩につながります。
とはいっても、お金と違って自信や責任なんて目に見えないし、数値化もできない。そんな深い人間関係をいちいち築けるほど時間もないし、うまくいくとは限らない。だから、現実的ではないかもしれません。でも、貧困の原因が構造だけでなく個人にもあるとするなら、その解決はそういう根気のいる「人と人のかかわり合い(interdependency)」を避けては通れないのではないでしょうか。これをいかに税金を使って政策として実践するのか。ここまで考えないといけないんですけどねえ。難しすぎるので、おうちに持ち帰って考える宿題ってことにします。


最後に、常にその政策のマイナスの影響を考えるという点です。福祉政策それ自体が、貧困を人工的に再生産しているというのは定義やスティグマの議論からも明らかです。福祉や援助なんてのは、簡単に言えば人助けで、究極的には自己満足に満ちています。だからこそ、どこまでも内省的で自己批判的でなければいけないってこと。これは自戒の念も込めまして。

なかなか一度に全部スッキリとはいきませんが、こんなところでおしまいにします。

【参考文献】
Allen, G. (2011) Early Intervention: The Next Steps. London: Department for Work and Pensions.
Tomer, J.F. (2014) Adverse Childhood Experiences, Poverty, and Inequality: Toward an Understanding of the Connections and the Cures. World Economic Review. 3: 20-36.
阿部彩(2011)「相対的貧困率の推移:2007年から2010年」
厚生労働省(2012)「厚生労働白書」
厚生労働省(2013)「国民生活基礎調査」

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貧困ってなんだー!(壱) (貧困の原因について、AgencyとSructureの議論)

貧困ってなんだー!(弐) (ステレオタイプ・スティグマについて)

貧困ってなんだー!(参) (絶対的貧困と相対的貧困について)

貧困ってなんだー!(四) (社会的排除について)



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